この記事は先日放送された『銀河英雄伝説 DIE NEUE THESE』第1話の補足説明を目的としたものである。
『銀河英雄伝説 DIE NEUE THESE』第1話の感想はこちら
原作または旧OVA版を読んだり視聴したりした方ならば、その世界感や用語などは当然頭に入っていると思う。
しかし初見の方は第1話を見てストーリーはわかっても、たくさんの疑問点が浮かんだと思う。
この記事ではできる限り、そういうった疑問点を説明できればと思う。
なお注釈を入れてない限り、内容は原作第1巻をベースにしている。
銀英伝の世界について
銀英伝の世界は、熱核戦争で滅亡しかけた人類が、地球から宇宙に進出し、戦争や内部抗争を繰り返しながら3つの陣営を構成するようになった。
すなわち、ゴールデンバウム朝銀河帝国、自由惑星同盟、そしてフェザーン自治領である。
銀河英雄伝説第1話より引用
原作によると、帝国:同盟:フェーザーンの国力比は48:40:12。
人口は帝国:250億人、同盟:130憶人、フェザーン:20億人。
亜人や悪魔や宇宙人などは存在せず、純粋に人類だけである。
また帝国領と同盟領の間には航行不能宙域があり、辛うじ航行可能な場所はイゼルローン回廊とフェザーン回廊の2つだけ。
フェザーン回廊は帝国の自治領ながら、同盟との交易のために中立を宣言しており、帝国軍艦艇の通行を許可していない。
そのため帝国軍が同盟領に侵攻する場合は、イゼルローン回廊経由となる。
第1話の戦いの舞台であるアスターテ星域はイゼルローン回廊の同盟側出口付近に位置する星域となる。
なおイゼルローン回廊には、帝国軍が誇る要塞があり、その要塞があるため、同盟軍は帝国領へ侵攻することができない。
ゴールデンバウム朝銀河帝国
皇帝を頂点とする専制主義国家。
開祖はルドルフ・フォン・ゴールデンバウム。
自由惑星同盟を対等の相手とみなしておらず、叛乱軍と呼ぶ。
自由惑星同盟
民主共和制国家。
銀河帝国の圧政を逃れた人々が建国。
帝国とは150年戦争を続けている。
フェザーン自治領
形式的には帝国の自治領だが、同盟との交易も許可されている。
互いに対等な相手とみなしていない帝国と同盟はフェーザーンを介在させることによって、事実上の取引が可能となっている。
地球出身の大商人レオポルド・ラープが多額の賄賂と情熱をもって帝国に自治領の設置を認めさせたと言われている。
なお、ラープがその賄賂に使った資金をどこから調達したかは不明(意味深)。
アスターテ星域に侵攻した帝国の目的は?
原作ではラインハルトが「叛乱軍を足下に拝跪(はいき)させ、その功績によって自ら地位を確立するためである」という記述がある。
ただし当然ラインハルトの意向で出兵が決定された訳ではない。
帝国騎士のミューゼル家出身にすぎないラインハルトが、銀河帝国の名門ローエングラム伯爵家を継ぐことになり、そのお披露目のためという目的もある。
そして本当にローエングラム家を継ぐだけの実力があるか、敵と戦うことで試験するという面も。
ラインハルト自身の力を見るため、軍首脳部から評価が高かった、ミッターマイヤー、ロイエンタール、そしてメックリンガーがラインハルト旗下から移動となり、代わりに軍首脳部から煙たがれていたメルカッツたちが配属された。
「劇場版新たなる戦いの序曲」ではその辺の事情が細かく描かれている。
またラインハルトの戦死を望むフレ―ゲル男爵の手により、帝国軍の戦力に関する情報が自由惑星同盟に流出しており、そのため同盟軍は帝国軍遠征艦隊の2倍にあたる3個艦隊4万隻を動員した。
ラインハルトとキルヒアイスの関係は?
ラインハルトの副官を務めるキルヒアイス。
銀河英雄伝説第1話より引用
ラインハルト一家がキルヒアイス家の隣に引っ越してきてからの幼馴染であり、ある目的達成のための盟友でもある。
ラインハルトと一緒に幼年学校に入学。
そして卒業してこれまでずっと同じ部隊に配属されてきた。
ラインハルトはどうして若いのに上級大将という地位にあるの?
一応幼年学校を卒業して5年、ほぼ前線に立ち続け(途中で憲兵隊に配属されたこともあったが)軍功を揚げた結果、ここまで出世した。
もちろんそれだけでなく、ある事情も作用しているが、それはストーリーにも関わるので今回は書かない。
この戦いにどれくらいの兵士が参加したの?
帝国軍2万隻、同盟軍4万隻。
その艦数にびっくりした初見の視聴者は多いだろう。
しかしビックリするのはそれを動かしている兵士の数である。
原作第1巻によると、アスターテ会戦に参加した同盟軍の将兵406万5900名、帝国軍の将兵244万8400名という記述になっている。
つまり1隻あたり100人強で動かしていることになる。
あれだけ派手に沈んでいるだから、当然戦死者も桁違い。
よく人的資源が枯渇しないものだわ。
戦闘に関する疑問点について
銀英伝の世界では、レーダー透過装置や妨害電波が発達しており、それに加えてレーダーを無力化する材料が出現した結果、索敵装置としてレーダーは焼く絶たない状態になっている。
そのため索敵は有人の偵察艇や監視衛星で行わなければならず、そのデータを元に敵戦力や規模などを予想することになる。
銀河英雄伝説第1話より引用
なぜ第4艦隊は攻撃を受けた時シールドを張れなかったのか?
原作では第4艦隊がシールドを張れなかったという記述はない。
また旧OVA版にもないので、新銀英伝のオリジナルと思われる。
直前にデータリンクが作動しない旨のセリフがあるので、各艦の管制が第4艦隊旗艦であるレオニダスで一括運用されていたと考えられ、レオニダスと各艦のデータリンクが妨害されたため張れなかったと推測される。
第6艦隊が後方から攻撃を受けた原因は?
前述したようにこの銀英伝の世界での索敵は基本有人偵察頼りである。
つまり有人偵察を出していなければ敵の位置を察知できない。
第6艦隊の司令官であるムーア中将は、帝国軍は第4艦隊とまだ交戦中と考えており、第6艦隊の後方方面に対する索敵を疎かにしていたため、攻撃を受けるまで気付かなかったと推測される。
旧OVA版との違いについて
旧OVA版を見たことある方は、今回の新銀英伝といくつか違うところに気付いたと思う。
それに関してここで記述する。
ラインハルトやキルヒアイスはヤンのことを知らない?
旧OVA版第1話を視聴したことがある方は、あるフレーズが頭に残っているはずである。
それはキルヒアイスが何度も口にした「エル・ファシルの英雄と呼ばれた男」、そして「ヤン・ウェンリー准将」の2つのフレーズである。
旧OVA版ではラインハルトとキルヒアイスはヤンのことを知っている設定であり、そのため戦闘が開始されるまで、ラインハルトとキルヒアイスはヤンのことを警戒していた。
しかしこの新銀英伝では、ヤンのことを警戒するどころか、ヤンの存在自体を知らないそぶりである。
実はアスターテ会戦前、ラインハルトとキルヒアイスがヤンのことを知っていたという記述は原作には全くないのだ。
つまりあれは旧OVA版のオリジナルの設定だったのである。
旧OVA版の前に制作された「劇場版 我が征くは星の大海」。
この中でラインハルトとキルヒアイスがヤンを知る機会があり、それがそのまま旧OVA版にも引き継がれたという訳。
まあその知る機会も原作が改変されたオリジナルなのだが。
だからラインハルトとキルヒアイスがヤンのことを知らないという設定が原作準拠となる。
ラップが戦死するシーンがなかったことについて
旧OVA版で鮮烈に印象に残るシーンとしては、ヤンの親友であるラップ少佐が戦死するシーンを上げる方も多いだろう。
確かに沈みゆく第6艦隊旗艦ペルガモンの中で、婚約者のジェシカを想いながらラップが戦死するシーンは、旧OVA版屈指の名シーンであろう。
しかし、あれ、原作には一行もないのだ。
つまりあれも旧OVA版のオリジナル。
だから今回の新銀英伝で描かれないのはある意味仕方ないし、当たり前なのだ。
ただし次回第2話で描かれる可能性もあるのでまだ断定はできないが。
終わりに
簡単に書いたが、まだまだ疑問点はたくさんあると思う。
気になる方は是非原作を読んでほしい。